近代社格制度について

目次

近代社格制度の成り立ち

近代社格制度は、明治4年の太政官(いわゆる行政機関)布告「官社以下定額・神官職制等規則」により制定されました。

近代社格制度では、大きく以下4つの社格に分類していました。

近代社格制度の分類

分類概要
神宮伊勢神宮
官社官幣社、別格官幣社、国幣社
諸社府社・県社、郷社、村社
無格社社格の無い神社

伊勢神宮は「全ての神社の上にあり、社格のない特別な存在」とされていました。

また、無格社については、正確な社格ではなく他の神社と区別するための呼称でしたが、社格の一種ともされるようになったそうです。

官社について

祈年祭(五穀豊穣を祈る祭事)・新嘗祭(収穫に感謝する祭事)の際に国から奉幣(ささげ物)を受ける神社」を「官社」と定められました。

官社はさらに「官幣社」「国幣社」「別格官幣社」の3つに分類されます。

官幣社と国幣社

分類概要
官幣社神祇官(国家公務員的な位置付け)が祀る神社
国幣社国司(中央から派遣された地方官)が祀る神社

官幣社は例祭の際、皇室(宮内庁)から幣帛(ささげ物)を供進されていました。「二十二社(朝廷から特別の奉幣を受けていた神社)」や「天皇や朝廷にゆかりのある神社」から官幣社が定められていました。

一方で国幣社は例祭の際、国庫から幣帛を供進されていました。「各国の一宮」や「地方の有力神社」から国幣社が定められていました。

また、官幣社・国幣社は、それぞれ大・中・小に分類されていました。

官幣社と国幣社の分類

分類概要
官幣社官幣大社、官幣中社、官幣小社
国幣社国幣大社、国幣中社、国幣小社

その中で、布告当初から指定された「国幣大社」は存在せず、大正4年(1915年)に「国幣中社」の気多神社(現・気多大社)などが昇格したのが最初と言いわれています。

また、官社内での昇格や諸社からの昇格もあり、当時全国約11万社が存在した中で、最終的に218社が官社へ列格したそうです。

別格官幣社

「別格官幣社」とは「国家のために亡くなった武将・志士・兵士などを祭神として祀る神社」です。

「官幣社」「国幣社」との違いは、祭神が神や天皇・皇族ではなく人物(臣下)に限られている点で、国家の安定や天皇家の繁栄などに貢献した人物を祀る神社を対象にしていると言えます。

先の太政官布告「官社以下定額・神官職制等規則」の翌明治5年、「楠木正成公」を祀る「湊川神社」が最初に「別格官幣社」に列格され、その後計28社が「別格官幣社」に列格しました。

「北野天満宮」「太宰府天満宮」の祭神は人物である「菅原道真」ですが、「別格官幣社」ではなく「官幣中社」に列格しています。

これは「菅原道真」が「雷神」と同一視されたためと言われています。

官社の序列

官幣大社 > 国幣大社 > 官幣中社 > 国幣中社 > 官幣小社 > 国幣小社 > 別格官幣社

官幣中社と国幣大社の上下に明確な規定は無いそうです。

官社の一覧

リンク先は私の参拝記録です

官幣大社

神社名鎮座地
北海道神宮北海道札幌市中央区
月山神社山形県鶴岡市
鹿島神宮茨城県鹿嶋市
香取神宮千葉県香取市
安房神社千葉県館山市
氷川神社埼玉県さいたま市大宮区
日枝神社東京都千代田区永田町2-10-5
明治神宮東京都渋谷区代々木神園町1番1号
三嶋大社静岡県三島市
富士山本宮浅間大社静岡県富士宮市
諏訪大社長野県諏訪市 他
熱田神宮愛知県名古屋市熱田区神宮1丁目1-1
気比神宮福井県敦賀市
日吉大社滋賀県大津市
建部大社滋賀県大津市
多賀大社滋賀県犬上郡多賀町
近江神宮滋賀県大津市
日前神宮・国懸神宮和歌山県和歌山市秋月365
竈山神社和歌山県和歌山市
熊野本宮大社和歌山県田辺市
熊野速玉大社和歌山県新宮市
丹生都比売神社和歌山県伊都郡かつらぎ町
賀茂別雷神社(上賀茂神社)京都府京都市北区
賀茂御祖神社(下鴨神社)京都府京都市左京区
石清水八幡宮京都府八幡市
松尾大社京都府京都市西京区
平野神社京都府京都市北区
伏見稲荷大社京都府京都市伏見区深草薮之内町68番地
平安神宮京都府京都市左京区
八坂神社京都府京都市東山区祇園町北側625
白峯神宮京都府京都市上京区
籠神社(元伊勢籠神社)京都府宮津市字大垣430
大神神社奈良県桜井市
大和神社奈良県天理市
石上神宮奈良県天理市
春日大社奈良県奈良市
廣瀬大社奈良県北葛城郡河合町
龍田大社奈良県生駒郡三郷町
丹生川上神社
丹生川上神社上社
丹生川上神社下社
奈良県吉野郡東吉野村
奈良県吉野郡川上村
奈良県吉野郡下市町
橿原神宮奈良県橿原市
吉野神宮奈良県吉野郡吉野町
枚岡神社大阪府東大阪市
大鳥大社大阪府堺市西区
住吉大社大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9-89
生国魂神社大阪府大阪市天王寺区
水無瀬神宮大阪府三島郡島本町
廣田神社兵庫県西宮市
伊弉諾神宮兵庫県淡路市多賀740
出雲大社島根県出雲市大社町杵築東195
赤間神宮山口県下関市阿弥陀寺町4-1
香椎宮福岡県福岡市東区
宗像大社福岡県宗像市
筥崎宮福岡県福岡市東区
宇佐神宮大分県宇佐市
阿蘇神社熊本県阿蘇市
宮崎神宮宮崎県宮崎市
鵜戸神宮宮崎県日南市
霧島神宮鹿児島県霧島市
鹿児島神宮鹿児島県霧島市

国幣大社

神社名鎮座地
気多大社石川県羽咋市寺家町ク1-1
南宮大社岐阜県不破郡垂井町
多度大社三重県桑名市
熊野大社島根県松江市八雲町熊野2451
大山祇神社愛媛県今治市大三島町宮浦3327番地
高良大社福岡県久留米市

官幣中社

神社名鎮座地
金鑚神社埼玉県児玉郡神川町
鎌倉宮神奈川県鎌倉市
井伊谷宮静岡県浜松市北区
金崎宮福井県敦賀市
御上神社滋賀県野洲市
伊太祁曽神社和歌山県和歌山市
熊野那智大社和歌山県東牟婁郡那智勝浦町
梅宮大社京都府京都市右京区
貴船神社京都府京都市左京区
大原野神社京都府京都市西京区
吉田神社京都府京都市左京区
北野天満宮京都府京都市上京区馬喰町
坐摩神社大阪府大阪市中央区久太郎町四丁目渡辺3号
生田神社兵庫県神戸市中央区
海神社兵庫県神戸市垂水区
長田神社兵庫県神戸市長田区
吉備津神社岡山県岡山市北区吉備津931
厳島神社広島県廿日市市
住吉神社山口県下関市一の宮住吉1丁目11-1
太宰府天満宮福岡県太宰府市宰府4-7-1
英彦山神宮福岡県田川郡添田町
八代宮熊本県八代市

国幣中社

神社名鎮座地
函館八幡宮北海道函館市
志波彦神社・鹽竈神社宮城県塩竈市
鳥海山大物忌神社山形県飽海郡遊佐町
都都古別神社(八槻都都古別神社)福島県東白川郡棚倉町
都都古和気神社(馬場都都古別神社)福島県東白川郡棚倉町
伊佐須美神社福島県大沼郡会津美里町
二荒山神社(日光二荒山神社)栃木県日光市
二荒山神社(宇都宮二荒山神社)栃木県宇都宮市
一之宮貫前神社群馬県富岡市
大洗磯前神社茨城県東茨城郡大洗町
酒列磯前神社茨城県ひたちなか市
玉前神社千葉県長生郡一宮町
寒川神社神奈川県高座郡寒川町
鶴岡八幡宮神奈川県鎌倉市
浅間神社山梨県笛吹市
生島足島神社長野県上田市
弥彦神社新潟県西蒲原郡弥彦村
射水神社富山県高岡市
白山比咩神社石川県白山市
若狭彦神社
若狭姫神社
福井県小浜市
真清田神社愛知県一宮市
大県神社愛知県犬山市
敢国神社三重県伊賀市
出雲大神宮京都府亀岡市
出石神社兵庫県豊岡市出石町宮内99
伊和神社兵庫県宍粟市
中山神社岡山県津山市一宮695
安仁神社岡山県岡山市東区
速谷神社広島県廿日市市上平良308-1
宇倍神社鳥取県鳥取市国府町宮下651
水若酢神社島根県隠岐郡隠岐の島町郡723
美保神社島根県松江市美保関町美保関608
玉祖神社山口県防府市
田村神社香川県高松市一宮町字宮東286番地
金刀比羅宮香川県仲多度郡琴平町字川西892-1
伊曽乃神社愛媛県西条市
忌部神社徳島県徳島市
大麻比古神社徳島県鳴門市大麻町板東字広塚13
土佐神社高知県高知市一宮しなね2丁目16-1
西寒多神社大分県大分市
田島神社佐賀県唐津市
住吉神社長崎県壱岐市
海神神社長崎県対馬市
諏訪神社長崎県長崎市
新田神社鹿児島県薩摩川内市

官幣小社

神社名鎮座地
大國魂神社東京都府中市
竈門神社福岡県太宰府市
志賀海神社福岡県福岡市東区
住吉神社福岡県福岡市博多区住吉3-1-51
波上宮沖縄県那覇市若狭一丁目25-11

国幣小社

神社名鎮座地
岩木山神社青森県弘前市
古四王神社秋田県秋田市
駒形神社岩手県奥州市
出羽神社山形県鶴岡市
湯殿山神社山形県鶴岡市
秩父神社埼玉県秩父市
箱根神社神奈川県足柄下郡箱根町
小国神社静岡県周智郡森町
神部神社
浅間神社
大歳御祖神社
静岡県静岡市葵区
伊豆山神社静岡県熱海市
戸隠神社長野県長野市
穂高神社長野県安曇野市
度津神社新潟県佐渡市
高瀬神社富山県南砺市
雄山神社富山県中新川郡立山町
菅生石部神社石川県加賀市
剣神社福井県丹生郡越前町
飛騨一宮水無神社岐阜県高山市
伊奈波神社岐阜県岐阜市
砥鹿神社愛知県豊川市
津島神社愛知県津島市
尾張大国霊神社愛知県稲沢市
吉備津彦神社岡山県岡山市北区
備後吉備津神社広島県福山市新市町宮内400
沼名前神社広島県福山市
大神山神社鳥取県米子市
倭文神社鳥取県東伯郡湯梨浜町大字宮内754
日御碕神社島根県出雲市大社町日御碕455
物部神社島根県大田市
須佐神社島根県出雲市佐田町須佐730
佐太神社島根県松江市鹿島町佐陀宮内73
忌宮神社山口県下関市
千栗八幡宮佐賀県三養基郡みやき町
柞原八幡宮大分県大分市
藤崎八旛宮熊本県熊本市中央区
都農神社宮崎県児湯郡都農町
枚聞神社鹿児島県指宿市

別格官幣社

神社名鎮座地
上杉神社山形県米沢市
霊山神社福島県伊達市
東照宮(日光東照宮)栃木県日光市
唐沢山神社栃木県佐野市
常磐神社茨城県水戸市
小御門神社千葉県成田市
靖国神社東京都千代田区九段北3-1-1
久能山東照宮静岡県静岡市駿河区
尾山神社石川県金沢市
福井神社福井県福井市
藤島神社福井県福井市
結城神社三重県津市
北畠神社三重県津市
護王神社京都府京都市上京区
建勲神社京都府京都市北区
豊国神社京都府京都市東山区
梨木神社京都府京都市上京区
談山神社奈良県桜井市
阿部野神社大阪府大阪市阿倍野区
四條畷神社大阪府四條畷市
湊川神社兵庫県神戸市中央区
名和神社鳥取県西伯郡大山町名和556
豊榮神社山口県山口市
野田神社山口県山口市
山内神社高知県高知市鷹匠町2-4-65
佐嘉神社佐賀県佐賀市
菊池神社熊本県菊池市
照国神社鹿児島県鹿児島市

諸社について

諸社」は、「府社」「県社」「郷社」「村社」に分類されます。

それぞれ、府・県・郡・村から奉幣を受けていました(「藩社」という社格もあったそうですが、藩社が指定される前に廃藩置県で藩が消滅したため、実際には存在しません)。

当時「一村一社」という原則があったそうです。小規模の神社が点在する中で、明治39年(1906年)の「神社合祀令」により神社の統合整理をすすめ、複数の神社を1つの神社に合祀させるか摂末社として遷座させることで神社の数を減らそうとしました。

これは、神社の継続的経営を確立させる目的とともに、当時の神社には「国家の宗祀(国として祀る対象)」としての側面もあったため、公費による財政負担を減らす目的もあったようです。

「神社合祀令」については、生物学者「南方熊楠」などが「合祀された神社の社叢(神社を囲う森・林)が伐採され、自然環境の破壊や未解明の生物が絶滅する。」といった理由で反対運動を行ったそうです。

ただし、明治の大合併で行政区分が整理されたため、詳細は不明のようです。